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管理の合間に背後がのらりくらりしてる所です。
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2020/04/02 (Thu)


綾乃さんの持病について。
綾乃自体は出てきてねぇですがね。話してるのは久臣とイッチーですわ。

今回はSSって言えないかもしれない長さっす。
 
<17日20時>条件その2書くの忘れてたー!!!!ってことで、20時にちょいと加筆。ほぼ変わってねぇ。





<会話文だけでも相当長いので、行間は極力省きますのであしからず>


「は? 綾ねえが不眠になった事あるかって?」
「久臣、声が大きい」

 珍しく自分の部屋に訪れた伊知郎がの言葉に、久臣はつい素っ頓狂な声をあげてしまった。
その反応に話題を切り出した伊知郎が薄く苦笑を返したのを見て、久臣は苦笑を返して自分の失態を恥じる。

当の本人の綾乃は現在伊知郎の家に荷物が届くので、一人で留守番中なのだそうだ。
(※先日のブログの『insomnia』と現在同時刻。伊知郎はそうやって誤魔化したらしい)

だが、この事はこの家の住人でも祖父の茂久とその影である浩一、実弟の久臣、そして彼の影の彩華しか知らない事実。故意に隠している訳ではないのだが、無闇に言いふらす話でもない。
それに何処で誰が何を聞いているか分からない。久臣の部屋自体は彩華が人払いをしてくれているので、聞かれる心配はないのだが、大きな声を出せばそれも別問題となる。

「悪い。で、それ誰に聞いた」
「綾乃本人がそれらしい事を、先日口にしたんだ」
「へぇ、珍しい。 けど、それを俺に聞いてどうするんだよ。」
「綾乃に問いただす事も考えたのだが、綾乃自身はもう大丈夫だと言っていたので、本人はそう思っているだけと言う可能性もあるからな。
久臣か茂久さんに聞くのが適任と思ったまでだ」
「……まあ、伊知にいの判断は正しいと思うよ。 あの人の不眠、まだ治ってないしな。」
「やはりそうなのか?」
「ああ。でも一定の状況下でないと出ない、珍しいものだから大丈夫だ。」
「一定の状況下、か。それは?」

 伊知郎の言葉に、久臣が自室の窓を静かに開け放つ。
すると微かに湿気の濃い 雨の臭いがするのに嫌でも気がつく。

「嫌な気配がすると思ったら、やっぱりか。 ― 伊知にいになら分かるだろ?」

 久臣が言ったとおり雨の臭いが濃い。人狼である伊知郎の鼻は常人よりも感覚が鋭く、その嗅覚が激しい雨の気配を伝えてくる。

「今日みたいな雨の日。バケツひっくり返した様な雨の日なら、尚更だ」

 耳に訴えてきた久臣の言葉と、嗅覚を刺激する雨の臭いに微かに伊知郎は顔を顰めた。
本当であれば今すぐにでも綾乃居る自室に帰りたいのだろうが、ここで話を聞かずに帰ってしまえば事の次第を聞く機会を失ってしまうと判断したのだろう、部屋を出て行く様子は見えない。

「雨の日とは、制約が緩くないか?」
「まあ、そうなんだけど……まだ条件があるんだ。」

 久臣の言葉に伊知郎が無言で先を促す。その様子に、彼もまた話す決心を固めたようだ。

「先に綾ねえが不眠になった理由を話すよ。
 理由は……あの人にとって大切な人が死んだのがきっかけだ。俺達の父さん、母さん、…そして綾ねえの最初の影だった宗佑さん。一ヶ月の間にこの三人が亡くなったのが原因だって言われてる。
特に俺達の両親に限っては事故だったけど、宗佑さんは綾ねえを庇ってゴーストに殺されてる。一番のネックはその人だと思って過言じゃないと思うぜ」
「その宗佑と言う人物は一体何故?」

 伊知郎の問いに、久臣は窓の外 ― いや、その先にある神社の裏山を見た。
そこは嘉凪一族の唯一の資産であり、そして、彼らの神体である嘉月川の源流である聖地、彼らの一族の墓、言ってみれば嘉凪の家の全てがあった。

何も言わずに山を見ていた久臣が、伊知郎に視線を戻した。その瞳の色が、いつもよりも赤みを帯びているように見えたのは気のせいだろうか。

「伊知にいには言っていいか。
 ……嘉凪の一族の山には、封印された一角がある。一族の能力者しか近づけない……穢れた場所だ。
 そこには過去の当主の成れの果てが黄泉返り、そして地縛霊として根付いている。奉納舞を終えると、舞を行った能力者はそこに奉納舞で使用した祭器を奉納する。穢れを祓い、穢れた物を破棄する為に。そしてその穢れを代々の当主達が担い、時間をかけて浄化していくんだ。
 当時の次期当主の綾ねえは、影の宗佑さんとそこに言って……」
「……そうか。」
「宗佑さんは綾ねえと10歳離れてたけど…仲が良かったよ。俺にも優しくしてくれたし、兄貴みたいな人だった。その人が亡くなったのが、父さん達が死んで一週間後だった。
 ……呆気なかったよ。重傷を負って帰ってきたと思ったら、慌しくなって……そのまま……」
「久臣、もういい」

 制止された久臣は、伊知郎に向かって苦笑を返す。
その表情は、まだ年端のいかない13歳の表情には到底見えない。幼さを捧げて、能力を得たと言う彼の祖父の茂久の言葉は、幾分間違っていないのかもしれない。

「当時の綾ねえの落ち込みようは酷かったよ。それでも、俺達の前ではそんな素振り見せなかった。
……当時、今の俺と変わらない歳だぜ?無理して、虚勢張って俺達に心配かけないようにして……あの人は二つの病を患った」
「二つ?」
「不眠症と、呼吸器の突発的発作…過呼吸だと思ってくれればいい。でも、後者は今では滅多に出ないみたいだ。主治医もほぼ完治してるって言ってるから安心してくれ」
「……綾乃の事は大抵知っていると思っていても、まだ知らぬ事が多いのだな。」
「婚約者でも所詮は互いに人格を持つ二つの他人だ。それくらい当たり前だろ。…全てを知ってる方が俺は怖いと思うけどな」
「それもそうか。 久臣は不眠の症状を知っているのか?」
「まあ、主治医に聞いたから大体は。確か、寝付きにくいのと悪い夢を見るから寝たくなくって無理に起きてるらしい。」
「そうか。難しいな……」
「彩華に薬預けてるから、帰る時に念の為に持って行ってくれ。でも、出来るだけ薬は使わずにって医者が言ってた。」
「珍しいな。投薬治療を勧めないとは」
「綾ねえが薬嫌がるんだよ。薬飲むと余計寝れなくなるって言ってた」
「……子供ではないのだからな……」
「だよな…。それともう一つの条件なんだけど、『奉納舞の日の前後』がその条件だな。でもその日の前後なら確実になる訳じゃない。なるか、ならないかは……綾ねえ次第だな」
「それもやはり宗佑と言う人物の影響か?」
「だと思う。だから多分、なるとしたら父さん達か、宗佑さんの事を思い出すきっかけがあったりしたら可能性は十分にあると思う。
 ……こればっかりは、俺も断言出来ない。」
「そうか」
「で、俺から言えるのはこれくらいだけど ―」
「十分だ。話し難いことまでありがとう。」

 それだけを告げると、伊知郎は家路を急ぐと言わんばかりに踵を返して部屋を出て行こうとする。
その後姿に、久臣はこれだけは言っておかねばと呼び止めた。

「伊知にい」
「何だ?」
「綾ねえの事、嫌いにならないでくれよ? あの人、伊知にいに嫌われたら ―」
「その心配は無用だな。俺が彼女を嫌う訳がない」

 言葉を遮って静かに、でも力強く告げられた言葉に添えられたのは、自信に満ち溢れた伊知郎の笑み。
その顔を見るとそれ以上何も言えなくなり、久臣は「なら安心だよな」と平然と惚気た義兄に苦笑を返して部屋を去る彼を見送った。

「……これで綾ねえのカードは全部晒したか。あとは……」

 椅子を傾け、窓の桟に頭を預ける。すると窓の外から雨の臭いが鼻を突いた。どうやら降ってきた様だ。
その濃い雨の嫌な臭いに、久臣は胸を掴んで喉から苦い声を漏らすと急に蹲る。

四年前のあの日、楔を穿たれたのは綾乃だけではない。
雨の臭いと体の中を這い回る黒い毒の様な感覚に激しく咳き込む。どちらか一方だけであれば我慢は出来ただろう。だが、二つ同時だと稀にこうして吐きそうになる事が多い。
近くにあったゴミ箱を手繰り寄せ、胃の中の全て吐き出す。そうでもしないと我慢できなかったからだ。


 実は、今月の奉納舞は昨日行われたのだ。


雨の臭いと穢れの感覚。それが綾乃に記憶を呼び寄せ、眠りを奪い、そして程度は違えど久臣の体調を害する。
それらが思い出させるのは、あの雨の日に穢れに塗れて戻ってきた綾乃と ―

「久臣様!」

 伊知郎を車まで送ってきたのだろう、戻ってきた彩華が慌てて久臣に駆け寄る。

「― 悪い、彩華。 …拙いな、穢れがまだ残ってたか。」
「当主の影には私から連絡を入れて、車から降りる際に清めておくように申し付けます。ですから、貴方はご自身の清めを」
「いい、自分でやる。それより先に連絡してくれ。 ― 彩華、爺ちゃんと綾ねえには内緒な。」
「何度もお聞きしています。今更告げ口をするつもりなどありません」
「ああ。 ……呪われてるってのも、満更嘘じゃないかもな」

 久臣は彩華から差し出されたタオルで口元を拭うと、苦く笑った。
 







               そんな訳で綾乃の持病について。
               儂もまあ、微妙な持病があるんで、出た時の辛さは分かるような…?
               ちなみに「宗佑」は「そうすけ」って読みます。綾乃の10上だから、生きてたら26かな?
               前回のブログの三人目は宗佑さんっすね。
               両親が亡くなった時に綾乃を励ましてくれた人ですわ。

               綾乃にとって、今会える、今話せる人がその人と自分の全てだと思ってるのです。
               なので、あんなストレートな性格なのですわ。臣然り。
               そんな訳で嘉凪姉弟の発言で気分を害した人は遠慮なく言ったってくださいな。



               
               

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