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管理の合間に背後がのらりくらりしてる所です。
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2020/04/02 (Thu)



綾乃の部屋の窓辺に ブルースターの花束が生けられた花瓶が置かれている。







        SSなどお礼を込めた物を書きたいので、スペース確保。もうしばらくお待ちください。
        (予定は木曜~日曜の間に。お盆休み期間とも言う。

        そしてこっそりSSを追加。綾乃と伊知郎が無駄にラブラブです。(功刀の許可済
        許せる方のみ続きをどぞ。


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それから一週間後。

 みんなと話し終えて、伊知郎と二人帰路につく。明日は土曜なので、私は伊知郎の部屋に来ていた。

家具が多くない、殺風景な部屋。でもそこは彼が気に入った物だけが置かれている洗練された部屋。
その中に自分が入るのを許されるのは非常に嬉しい。

そこには以前、伊知郎が綾ちゃんから託され、そして私に手渡されたブルースターの花束の半分が窓辺で風を受けて微かに揺れていた。

伊知郎が飲み物を淹れてくれている間に窓辺まで移動して、その花を撫でる。
自分と恋人の仲を気遣って、大好きな友人がくれた花。
それを貰った日に半分に分け、半分を自分の部屋に、そしてもう半分を彼部屋に飾ったのだ。

そんな新しい思い出を思い出し花を愛でていた背中に、暖かな気配が感じられる。


「一週間か。水だけだと言うのに、植物は逞しいな」


 後ろに現れたのは伊知郎。
 
ローテーブルに冷えたお茶を置いて後ろに立った彼は、窓と自分の間に私を閉じ込めるように後ろから手を伸ばして、花瓶の花に伸ばした私の手ごと包むように優しく触れる。

その自分よりも少し冷たい手が愛しくて、そっと重ねられた手に自分の手を絡めてみた。
相変わらず大きい手は、私の手を包み込んでくれる。


「ね。伊知郎の部屋のも綺麗に咲いてるね」
「ああ。頻繁に水を換えたりしているからな」
「相変わらずマメねー」


 そうは言いつつも、私の部屋のブルースターもまだ綺麗に咲いている。
それが分け合った花がお互いに綺麗に咲いたままなのがなんだか繋がっている様で、そしてその花をくれた二人が自分にとって花と同じく色褪せない存在の様で、嬉しくて仕方がない。

嬉しい気持ちを隠さずに肩越しに振り返って楽しげに笑うと、伊知郎も静かに微笑む。
でもその笑顔を見て、少しだけ悲しげに、儚げに目を細めてしまった。


「……伊知郎、クルースニクに戻っちゃったんだね」


 動物が好きなので、伊知郎の狼変身は嬉しい。
……嬉しいけれど、それと同時に不安が心の中に蟠っていた。

絡めた手が持ち上げられ、伊知郎の唇が指に触れる。その唇が不思議そうな声で言葉を紡いだ。


「急にどうしたんだ?」
「…ううん」


 そう言いながらも絡めた手を解き、彼の腕の中で体を反転させ、彼の胸にそっと抱きついて目を閉じる。
すると高くはない彼の体温が、鼓動が感じられて泣きそうになった。

本当に  クルースニクに戻ってしまったのだ

この  自分の愛しくて 大切な人は


「綾乃?」


 しっかりと私を抱きとめてくれながらも、伊知郎が不思議そうな声で私の名前を呼ぶ。
その声に名前を呼ばれて、……この声を、この暖かさを失う事が怖くて、体の中が冷えた気がした。


「…怖いの」


 胸の中の不安を口にした瞬間、体が震えたのが分かった。けれど、その震えに反応するように伊知郎の手がピクリと動く。


「怖い? ……人狼に戻った俺が、怖いのか?」
「違う。伊知郎じゃなくて……人狼に戻った伊知郎を、誰かが連れ戻しに来ちゃうんじゃないかって。」


 不安げな伊知郎の言葉を即否定して、更にギュッと強く抱きついた。

伊知郎がどんな人であろうと、自分は彼を恐れる事があるはずなんてない。
彼がどんな人であっても、その過去ごとを愛そうと決めたのは  私だから。

けれど伊知郎は銀誓館に来る前の傭兵時代以前の記憶がない。
そう、封印の眠りから何時覚めたのか、そもそも家族は居るのか、など全ての記憶を彼は持っていなかった。

過去ごと愛そうとは決めた。
けれど、その愛そうと決めた過去を知らないのに不安が無い訳じゃなかった。

だからクルースニクを過去と共に捨ててくれたのだと付き合いだしてから知った時、正直安心した。
過去を彼が捨ててくれたから、過去を知らない伊知郎を誰かが連れ戻しに来る可能性は、
……無くなった訳ではないけど、それでも彼に戻る気がない事を明示してくれたのが嬉しかった。

そしてそれは彼自身が知り、そして私も知りうる彼の過去だけが彼の過去の全てだと示してくれているようで、安心出来たのだから。

― でも伊知郎は、再びクルースニクに戻ってしまった。
私を守る為の強さを求め、逃げる様に置いてきてしまった過去と向き合って、自分のものとする為に。

私と共に在る為に強くなろうと思ってくれるのは嬉しい。
でも、今はそれ以上に彼を失うのではないかと言う不安だけが心を締め付ける。


「君を置いて何処かへ行ったりはしない。……君を手放したりなど出来る訳がないだろう」


 そんな不安を、優しく、けれど力強く抱きしめる力が拭おうとしてくれる。
自分の気持ちを汲み取って、優しい言葉をかけようとしてくれる伊知郎の気持ちは嬉しい。
クルースニクの伊知郎だって好きだし、正直、動物は好きだから伊知郎が狼変身出来るのは非常に嬉しい。

でも それは自分だけが嬉しいのだろうか。
自分以外の  ― 例えばクルースニクの伊知郎の力を必要としている人が居れば?
そう思うと不安は拭えない。


「…うん」
「まだ不安か?」


 歯切れの悪い返事に、まだ不安が残っているのが分かってしまったのだろう。
宥めるような伊知郎の声に、これ以上心配をかけたくなくて無理に微笑もうと顔を上げる。


「少し。でも大丈 ― んっ、伊知郎、くすぐったいって」


 無理に強がろうとする言葉を遮って、伊知郎の唇が額や米神、頬を撫ぜる。それがくすぐったくて、クスクスと笑みが零れ始めた。


「もう、くすぐったいって。 伊知郎っ」


 クスクスと声を漏らして笑い、それを妨害しようと伊知郎の顔を抱きしめる。
すると伊知郎も喉を低く鳴らして笑う声が聞こえた。

私を甘やかせたい時や、自分が私に触れて安心したい時、伊知郎は私には唇で触れてくる事が多い。
どうやらクルースニクとしての狼の習慣なのだろう、と本人は冗談混じりに言っていたけど、あながち間違いではないみたい。

それで不安なのは 何も自分だけじゃないのだな、とそれで気付かされた。
過去を持たない伊知郎自身が一番不安だと言うのに、自分ばかり心配してたのが恥ずかしい。
だから抱き抱えていた伊知郎の顔を放すと、今度こそ相手を安心させる様に微笑んだ。


「ありがと。…元気出たよ」
「それならば良かった。君の笑顔が見れないのは寂しいからな」


 嬉しそうに微笑んで伊知郎の顔を見上げると、彼も自分を見下ろして優しく微笑む。
自分にしか見せない笑顔が嬉しくて、自分を大切にしてくれる彼が愛しくて、背伸びして伊知郎の唇に自分の唇を重ねた。


「ありがとう、伊知郎。 あなたがどんなあなたでも、大好きよ」












       糖度は当社比2倍以上だと信じてる。
       会話部分とかはイッチーの背後の功刀に見てもらったんで問題なし。

       …砂糖吐きそうですけど、こいつら意外と人前じゃないとラブラブバカップルですな。
       まあ、卒業したら夫婦だし、普段は伊知郎→綾乃だが、
       その実、ちゃんと綾乃も伊知郎大好きだからしゃーねぇか。


 

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