ずっとずっと 傍を離れない不安
ずっと 最初から最期まで 一緒にいてくれる人なんて いない事は 最初から ―
「寒っ…」
化外の血を身に入れようとも、寒さを感じるのは当然といえば当然。
微かに開いていた窓を、寒さを拭うように擦り合わせてた手で閉めようとして やめた。
寒さを感じるが、寒さが辛いと感じなくなって、間もなく半年。
闇を飲み込むような暗い天を見上げて見ても、白い風花が降りてくる気配はない。こんなに寒いのに。
雪は幼い頃から好きだった。
あの音すらも飲み込むような静けさと、光を受けて輝く真白に憧れを抱いた事すらもある。綺麗と言う言葉が似合う、自分にはない清く美しい姿。
その雪を見て、思い出す人物は二人。
一人は色合いは雪とは正反対の鮮やかで艶やかな色を持つ女性だけれど、その実、性格はまさにその自然の生み出した雪の如く美しくて、静かで、優しい人。髪の色とか、雪の上に墨を落としたように黒くて綺麗だ。
そしてもう一人は ―
ふと、視線を落として自分の左薬指を見ると、魔を祓うと言う銀に、少し赤みを帯びた桃色のラインが入った指輪が光るのが目に付いた。
― 隣にいて、必ず護る ―
言葉と共に、誓いを銀の輪としてくれた男性(ひと)の声が聞こえた気がした。
雪と同じ髪の色を持ち、性格は…雪と言うよりは今、天に輝く月の様に静かで穏やかな人。…基本は。そう思って、ふと口元に笑みが自然と浮かんだ。
彼が私を、自分の隣にいてほしいと願ってくれてから…今日で一年となる。
彼が隣にいてくれて、隣で笑ってくれて、声が聞こえて、手が優しく触れて、息遣いを感じる日々。それがこんなにも嬉しいと、愛しいと思うなんて、きっと一年前の自分は思ってもいなかっただろう。
最期まで 傍にいてくれると 初めて約束をしてくれた人。
家族を、兄のような人を見送った、失った自分を哀れむでもなく、必要としてくれて、惜しみなく愛情を注いでくれる人。
「大好きよ、伊知郎」
目の前にいなくても、名前を呼ぶと自然と笑みが零れる。
普段、皆の前では大好きで愛しくても、皆の前では恥ずかしくて、皆との時間が限られているからこそ、そっちを優先して少し距離を取ってしまったりするけれど。
ふと携帯を取り出し、手短にメールに感謝と愛情の言葉を綴る。
まだ起きているか、もう寝てしまっているかは分からないが、今この気持ちは知っていてほしくてとりあえずメールを送信し…ようとした。
送信しようとしたのだが…手の中の携帯が急に震えて着信を告げる。
液晶ディスプレイに表示された名前に表情をほころばせて、綾乃は通話ボタンを押した ―
綾乃とイッチー付き合い初めて一年っす。
そしておおよそ婚約7ヶ月目。…あれ?(笑)
綾乃は三人の大事な人を失ってから、ずっと与える事を優先してきた子です。
でも銀誓館に入って、臣に次期当主を譲ってイッチーと付き合いだしてから、
少しずつ与えられる事、甘える事にもだいぶなれたかなーと。
雪子嬢にはダダ甘えですが。(汗)
まあ、そんなワケです。
こんな娘ですが、よろしゅうに、旦那殿。PR