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管理の合間に背後がのらりくらりしてる所です。
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2018/11/17 (Sat)

葉禊の葉は言葉の意味っす。
まあ、つまるところ話をして、気持ちも改めてって感じで。

前回の涙雪の続きになります。

時間的には1月1日の6時頃でしょうね。
舞がだいたい朝7時頃に行われるので。

次回更新はー…筆が進めば3日以内には。(汗)

 




純白の着物の上に純白の仮衣を着て、蒼く地面に引きずるほど長い戦羽織を羽織る。
赤茶の髪は結い上げ、背中に流している。

黙々と着つけていく綾乃に、静かな水面の様な声が響いた。

「綾乃様、準備は?」
「今終わりました。 彩華、面の用意は?」
「ここに」

 音もなく彼女もまた女官の正装を纏った彩華が目の前に差し出してきたのは、蒼い龍の面。奉納舞は蒼い龍の面を纏った赤銅の目を持った者が龍を身に宿して境内の穢れを刀で舞祓うのだ。
もちろん、使用する刀は真剣。なので舞を行う者は練習を頻繁に行った者に限定されているのだが、今回の綾乃は特例だった。
1年前までは3年間ずっと舞い続けたキャリアを持つからこそ、舞を踊る事を許されたのだった。

「舞は覚えていらっしゃいますか?」
「当然。でなければあんな事言いださないわ」

 彩華の言葉に苦笑を返す。そうは言いながらも、少しばかり不安が過る。1年前までは毎月行っていて、毎週練習をしてきたものだ。体は覚えている。舞の音楽が聞こえれば、舞を踊る事は可能だろう。体全てに刻んできたのだ、忘れる訳もない。

面を付けようとして、長く息を吐く。
こんなにもこの面を付ける事に勇気が必要だっただろうか。こんなにも舞を舞うのに緊張した事はあっただろうか。
思いだそうとしても思い出せない。それ程に奉納舞は綾乃にとって当たり前の事で、そして1年前に失ったあの日、もう二度とこの衣装を纏う事は無いと思っていたからだ。
けれど、今はそれでも思い出さなければならない。体だけではなく、気持ちも舞に向った時の事を。

 今の自分の顔色が真っ白なのは分かっている。
緊張しているのもあるのだが、深夜の禊を行い体中が冷え切っているので、血の気が薄いのは当然。けれど自然と体は寒さを感じていない。それが雪女の特性だと言われればそれまでなのだが、それ以前にこれ位の事は慣れさせられたからだった。今の季節は来訪者の血を交えていない久臣も、この禊は行うので結局は慣れの問題だ。

彩華から面を受け取ろうとした瞬間、本殿に通じる襖から「次期当主が参られました」と声がする。その言葉に綾乃も彩華も動作を止めて襖の方に頭を向けた。

音もなく両開きに開かれた襖から現れたのは、白小袖に葵袴の久臣の姿。次期当主になってからは深縹の小袖に藍鉄の袴が板に付いていたので、その久々の姿を見て、なんだか以前に戻った気がした。

「姉上、伊知郎殿がいらっしゃっている。…にしても、なんで奉納守を伊知にいにしたんだ?」

 奉納守とは、奉納舞で使用した祭器を一族代々の墓に奉納する舞手の護衛になる。
当主達が行う際はその影がそれを務める事になっており、綾乃の時は宗佑が亡くなった後は現在当主の茂久の影である浩一が行っていた役割だった。

それを今回、綾乃は伊知郎に頼んだのだ。
久臣が不思議がるのも仕方がない。奉納守は直系に近しい者しか許されぬ役割。しかも危険な役目なので、自然と能力者となる。

確かに伊知郎は綾乃と婚約を済ませているので、直に一族の、しかも直系の婿となる者なので条件には当てはまっている。けれどそれも婚姻が成立していない婚約の状態では効力が薄い。
久臣が言いたかったのはそれだ。わざわざ一族の老人達に反感を買う様な事をせずとも、久臣や彩華でも護衛は事足りるはずだと言いたいらしい。

弟の言いたい事は分かっているとでも言うのだろう、彩華から龍の面を受け取りながらもあっけらかんと答える。

「ん? もちろんそれは反対派に喧嘩売る為」
「― 姉上」

 咎めるような声に、苦笑を返す。まさか本気で自分がこう答えるつもりだと久臣も思っていないとは思うのだが、少し冗談が過ぎてしまったようだ。

「冗談よ。来訪者の能力の高さを証明したかっただけ。浩一さんや、臣や彩華が頼りないってワケじゃないわ」
「それは分かってる。でも……本当にいいのか?」

 本当にいいのか

久臣のその言葉が、詳細には何を示しているのか綾乃にも分からなかった。けれど、それを聞き返すほど、こちらも的を得ていないワケではない。そしてそれが外れていない事も。

だからこそ、龍の面を付けながらもニッコリと微笑んでみせた。

「誰に言ってるのよ。 それよりも臣こそ太鼓久々だけど大丈夫なの?」

 笑みを添えられた言葉は想定内の言葉だったらしい。強気な姉の言葉に久臣もふと笑い、手にしていた太鼓の撥を持ち直す。一年前までは使い慣れた和太鼓の撥。
 綾乃が舞手を務めている時は、久臣が筆頭に4人が和太鼓を務めていた。当主の茂久は現在は舞の現役を退いているので、調子取りの笛は茂久の影である浩一と彩華が務める事になっていた。

だが、綾乃の言葉こそそれこそ角違いなのを彼女自身が知っている。
綾乃が舞を幼い事から教わっていたのと同様に、久臣も和太鼓はずっと昔から学んでおり、それこそ彼の音楽の勘はそれが育んだと言っても過言ではないのだから。

「馬鹿言うなよな。それこそ誰に言ってるんだよ」

 自信たっぷりな言葉に、綾乃も力強く微笑んで拝殿へ続く襖を開けた。


 舞が行われるのは境内にこの時期に準備される奉納舞用の舞台だ。
舞台の上には2つの長胴と3つの桶胴太鼓用意されている。神和神社の奉納舞は普通の巫女神楽ではない。舞手が龍に扮し、太鼓の音に合わせて舞い、穢れを払うエンターテイメント性に富んだものだった。
観客に魅せるのではなく、観客も一体にするかの様な力強い神楽。それが神和の奉納舞だ。

それを行う為に舞手の自分が陰鬱な気持ちのままではいけないと、綾乃は気持ちを引き締める。
だからこそ、襖を開け放つと部屋に流れ込む冷たい空気を一身に受け、今は頼りになる奏者である久臣と彩華を振り返って綾乃は二コリと微笑んだ。

「頼りにしてるわよ。 それじゃあ2人もよろしくね」
「御意に」「綾ねえこそな」





           舞自体はおおよそ5~6分の短いものですが、
           日本伝統的な神楽で、主に和太鼓の神楽を参考にさせてもらいました。
           と、言うのも嘉凪のお家が熱血の熱い家、そして神社自体も
           地域に馴染んでいる神社なので、地域を巻き込むような熱い神楽なのです。
           
           さてさて、次はやっとこさ舞本編です。
           今のところお1人からお手紙もろてるので、彼女の分は反映する予定です。
           さーて、久々に爺ちゃん書くから楽しみっす。
           
           ちなみに舞の参考映像はTubeで「神楽 和太鼓 久山」でトップにくると思われ
           色々参考にしたのですが、一番イメージにぴったりなのはそこかなーと。

 

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いぶき嬢の指摘に感謝

誤字に定評のある嘉凪ですが、連続ってどない。
と言うワケで、とりあえず指摘いただいた箇所は直しました。
まだありそうな…。

ちなみに今続き執筆中。
お手紙くださった人は極力出します。会話もある可能性大です。
嘉凪さん / 2011/01/02(Sun) / 編集
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