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2018/12/12 (Wed)

※澄律(ちょうりつ と読む ※調律とも、澄んだ音色(律)とも言う。その辺は読み手の感覚でどぞう)

◆一応、恒例の注意書き。

1.これは<前略>→「澄律4」の続きの話です。
※分類:『竜神衛士の一族、嘉凪家の話』がそれに該当。

2.この話に出てくる「嘉凪の一族」はあくまで嘉凪の脳内で作ったフィクション一族です。
  歴史とか民俗学、日本文学に詳しい人に言わせりゃ荒も多すぎて見れたもんじゃないと思います。
  なので、くれぐれもこの設定を参考にしないでくださいな。恥ずかしくて死ねます。

3.そして今回恐らく、澄律の中で最長。 恐らく。







※前回の最後の部分

「口にはしていませんが、見えぬものを不安を感じるのは当然でしょう。ならば、かつての我らの祖とこの地に住む者達が行ったように明確化すればいい。」


 言葉を綾乃の先を引き継ぐ様に、今度は久臣が口を開く。
ここは予め姉弟で打ち合わせ済みの事だった。発端は綾乃が原因であるが、今から彼が口にしようとしている事は、一族に関わる言葉。ならばその座を降りた綾乃よりも、次期当主である久臣が口にするのが妥当だと判断したからだ。


「そこで姉弟にて当主にも相談した結果…功刀殿には姉上との婚約にて盟約とし、嘉凪の一族に対する来訪者の理解の礎となっていただく。
そして我らの友人達には、来訪者とその交流がある者としてその盟約の証人として行動で示して頂こうと言う形になった。」

「形に?それは如何なる…」


 河瀬の氏族長の言葉を遮り、辰瀬の氏族長が久臣達の意図が分からず訝しげな顔をするのを、久臣の赤銅の瞳に映される。
それを確認し、久臣はゆっくりと次の言葉を口にするために唇を開いた。




---------------------------------------------





「嘉凪の一族が残しし業を彼らの力を借り、俺の代にて全て浄化する」


 高らかな久臣の宣言に、下座に座る一族皆が驚愕した。けれどその驚きから皆が抜け出す前に言葉は続けられる。


「浄化 ― つまり、一族の墓に眠りし狂気に犯された御霊の殲滅を行い、墓には狂気に捕らわれていない害のない御霊のみを残す事を盟約とする」

「正気ですか、久臣様!?」


 慌てふためく一族の言葉をまとめたのは河瀬の氏族長。

嘉凪の一族は能力者の中でも少々変わっており、この神和神社の境内に溜まる穢れを己の内に溜め、体内でその穢れを竜神の神気によって浄化する能力を持つ。
巫覡として当然の能力である物を、竜神の加護する土地から穢れを吸い取る寄り代の能力と祓いの能力を己の体内で行なう事が出来る特殊な性質を持っているのだ。

けれどこの能力は意識化で使用できる物でもなければ、竜神の加護する土地以外で使用できる物でもなく、また、この神和神社の敷地内でのみ可能となる。

しかも厄介な事に、生きる為にその活力を使用し、穢れを受け入れて竜神の神気を取り込んで浄化する作業は己の意識を明け渡さなくてはならない為、生者はこの能力を活用する事はほぼ不可能と言われている。
つまり、この能力は浄化に活力を全て割け、意識がない状態 ― 死して初めて意味を成す能力。

嘗て竜神に対する信仰が今とは比にならない程強い時代であれば、竜神の神気は強く、そもそも一族のその能力に頼らずとも、竜神の血とも言われ嘉月川の源流が穢れを余す事無く浄化出来た。
だが、現在の信仰力ではそれも、ましてや直系の体内の穢れを竜神の神気で浄化することもままならない。比較的地元に信仰が根強いとは言え、寄る世には抗えないと言う事なのだろう。

二度目の世界大戦の頃には、穢れは神気に浄化される比率を越え、今では徐々に穢れは墓に眠る者達の骸だけでは飽き足らずに、まだ彼岸を渡らぬ一族の直系すら蝕み始めていた。

穢れによって、一族の直系の中でも一番影響を受けやすいのは当主。

しかも銀誓館によって確率されたイグニッションカードが無い時代は、穢れによる影響もあって見えざる狂気に飲み込まれる当主も少なくはなかった。
その為に、次期当主が当主を狂気から『解き放つ』。
そうして繰り返し当主の首を挿げ替えて、一族はどうにか存続を得ていたのだ。


それが  嘉凪の一族が残した業


祖の屍の上に成り立つのが、この一族 ― 嘉凪の一族の現状なのだ。
そして久臣と綾乃が行動を焦る理由もここにある。


「俺は正気だ。今回の姉上と功刀殿にお願いをした奉納にてその勝機も見いだした。今の我らならば、数さえ揃えば可能だと。
そして、このまま狂気を溜め込めば、いずれは御霊を押し込めている結界も崩れるのも遠い未来ではありません。次代に危うい要素を残すことを、俺は善しとしない」


 久臣の赤茶の瞳が鋭く光る。
それはまるで焔のようであり、当主としての彼の本能だ。普段の性格は水の様に静かで比較的穏やかな久臣だが、彼の本質は嘉凪の一族の当主に相応しい炎の気質を持つ。

最前線に立ち、竜神の加護を胸に、竜神の激情を武器に一族を守る衛士の質。
弟の瞳の奥の静かながらも確かに燃える炎の気配を見た綾乃は心の中で、自分よりも彼の方が当主に相応しかったのだと、そして自分が取った道は間違っていなかったのだと改めて感じる。

今までに前例のない事を仕出かそうとしている次期当主の言葉に、一族の者達の混乱は隠せない。


「ですが、祖の御霊の浄化など…!奉納舞に影響は出ないのですか!?」

「本来、浄化自体は源流から流れる水が洗い清めてくれていた。
御霊がいなくともそれは同じ。ならば、狂気に捕らわれたそれを墓内部で野放しにしている方が問題だと俺は思うが」

「それは、そうですが……現在の信仰で、そこまで補えるのでしょうか」

「補えない部分は俺が……これからの当主が補うものだと判断している。
夜の流れに応じて、我々も…いや、少なくとも当主が一族の流れを変えねばならない。違うでしょうか。」

「儂は異論ありませぬな」


 混乱する者達を冷静な言葉で落ち着けようと淡々と答える久臣の言葉に応じた者を確認し、波のように騒いでいた者達が急に静まり返る。
彼らの視線の先には1人の初老の男 ― 辰瀬の氏族長がそこにいた。


「成功すれば誰も損はしない。ならば反対する者もいないでしょう」


 久臣を静かに見据える黒い瞳。そこには、初老の男であると言うのに、代々当主の影を輩出してきた家の長と呼ぶに相応しい眼光が備わっている。

久臣を支援する河瀬の氏族長ならば、その発言はまだ理解出来る。けれど、彼は嘗て久臣と相対する立場にいた綾乃を支援していた人物。
その視線を真っ直ぐに受け止めた久臣は、少し意外そうに眉間に軽い皺を寄せ、その彼の表情の揺らぎに視線を投げかけた本人は微かに表情に苦笑を滲ませる。

その苦笑が久臣に彼の意図を図らせる事を困難にしていたのだが、そんな水面下のやり取りを知らない者達が再び騒ぎ始めた。


「しかし、失敗したら…!」

「失敗しようと、貴殿等に損害はない。万が一の場合は俺の責任だ。俺が ―」

「それは老い先短い儂の役目じゃろうて。」

「…爺ちゃん」


 久臣の言葉を遮ったのは、この場の一族の中で一番の上座に座っていた現当主 ― 茂久だった。
久臣とも、綾乃とも違う、静かではあるが意思のある強い信のある言葉に、波打つようにざわめいた声はもちろん、久臣ですら一瞬で言葉を飲み込んだ。

それ程に茂久の声は人に耳を傾けさせる声であり、衰えることのない祖父の威厳と能力者の才能に、元呪言士の綾乃も感心せざるを得なかった。


「この案に認可したのは儂じゃ。儂が現役を退き、久臣が18歳になるまでは氏族長らに権限は譲渡する。それでよかろう?」

「当主!」


 当主の突然の言葉に声を荒らげたのは、綾乃や久臣、ましてや彼の主である茂久ですら彼が声を荒らげた所を見た事が殆どない、茂久の影だった。綾乃と久臣も彼同様に祖父の発言に驚いて腰を浮かしかけたのだが、それよりも早く彼が声をあげたのでそれも叶わず、驚愕の表情を彼に向けている。
だが、そんな咎めるような影の視線と声に怯む事無く、茂久は自分の両脇にいる自分の孫達の顔を見た。


「一族の禍根を洗い流す事は、儂には唯一叶えられぬ悲願じゃ。久臣、綾乃、頼めるな」


 そう、今回の事は茂久では成し得ない事。嘉凪の家が抱えていた問題、狂気を孕んだ御霊を浄化するための能力者不足だからだ。
茂久は確かに嘉凪の家最高の当主かもしれない。けれど、彼の代は能力者は彼以外に発現しなかったのだ。
どんなに性能が良くとも、今回は数が勝負。だからこそ最高と歌われた茂久では成し得ず、彼の孫達に託された事だった。

自分達と同じ赤銅の瞳の奥の強い意志。
それは祖父であるが、それ以上に孫達を自分の後継者として認めてくれた当主の意志だった。それを受けながら、首を横に振る事など、眷属であり彼の孫である2人に出来る筈もない。


「「当然です」」


 力強い孫達の声と言葉に見合った強い意志を灯した瞳に、満足げに茂久は頷いた。


「ならば今回の件は久臣に一任する。 ― いがみ合いは終いじゃ!詳細は追って行わせる。以上!」





                      そして、今回で「澄律」自体は終了です。
                      ちょっと残りに爺ちゃんと久臣のお話が残ってますが、
                      それは別タイトルにしまするわ。
                       
                      ちなみに作中で辰瀬の氏族長が久臣の言葉にああ言う事場を返したのは、
                      『蒼衛』を見ていただけりゃ察せるかなーとか思ったり。
                      儂、これ書き終わったら、蒼衛の続き書くんだ…




 

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