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管理の合間に背後がのらりくらりしてる所です。
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2018/06/18 (Mon)
※澄律(ちょうりつ と読む ※調律とも、澄んだ音色(律)とも言う。その辺は読み手の感覚でどぞう)

◆一応、恒例の注意書き。

1.これは<前略>→「澄律3」の続きの話です。
※分類:『竜神衛士の一族、嘉凪家の話』がそれに該当。

2.この話に出てくる「嘉凪の一族」はあくまで嘉凪の脳内で作ったフィクション一族です。
  歴史とか民俗学、日本文学に詳しい人に言わせりゃ荒も多すぎて見れたもんじゃないと思います。
  なので、くれぐれもこの設定を参考にしないでくださいな。恥ずかしくて死ねます。









※前回の最後の部分


「…悪い。声を荒らげた事は謝罪する。だが、俺の友人達への暴言は許す気はない」

 彩華や綾乃に窘められて、頭の熱は下がった。だが、許せないものは許せない。
先程まで炎の様に憤っていた久臣の纏う空気が、一瞬にして水底の様に冷えた。どうやら、それだけは誰にも譲らないと言う事だろう。

主の。いや、嘉凪の当主が代々受け継ぐ二属性と言われる性格の起伏に、彩華は苦く、薄く表情を曇らせた。

「久臣様」

 彩華の言葉にも、久臣は声を返さなかった。それは断固とした拒否。
彼女とて、彼の友人達は知っているし、自身にも来訪者の知り合いなどそれこそ沢山いる。そして、彼や彼女達がまるで宝石の様に美しい性質を持っていることも。なので久臣の怒りも分かるのだが、ここで袂を分かってしまえば話が先に進まない。

どうしたものかと彩華が視線を巡らせようとすると、その視線を掬う様に綾乃が言葉を発した。





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「…皆様方のご心配も私達姉弟が幼い故、致し方ないものと理解できます。
ですが、皆様もお考えください。見もしない、ましてや彼らと話した事すらない者に、自分が信頼する者を悪し様に言われる気持ちを。」

 一族の言葉を撥ね付けた久臣ですら、どう次の話を切り出そうかと逡巡している中、静かに綾乃が言葉を続ける。さすがは彼よりも幼い頃から次期当主として鍛えられていただけはある。

普段はその様な空気を微塵も見せないが、この様な場所になると人が変わったかのように彼女は纏う空気を変え、今はこうして一族を嗜めすらした。


「確かに我ら姉弟は幼い故に思慮は浅い。けれど、だからと言って大切なものが見えていない事とは異なると思います」

「綾乃様が仰る事も正論。ですが、それも確証なき事でしょう」

「そうですね。しかし、今ここで答えが出ない論争で当主と久臣の心境を損ね、一族に無駄な亀裂を生じさせるだけの事態は私も避けたいのです。
我らの様に思慮の浅く幼い者と違い、皆様方は分別のつく方と存じますがいかがでしょう?」


 受けの言葉を返した老人に、綾乃は言葉に似合わぬようなニコリと穏やかな微笑を沿えて更に言葉を返した。
少し前までならば、老人の言葉に、返す言葉を考えて自分は黙り込むしか出来なかっただろう。けれど、今は違う。一族の辛辣な物言いに慣れたのもあるのだが、それ以上に自分には守るべきものが増えた。

愛する伴侶、心強い影達、大切な友人、そして ― 本来の自分の役割を押し付けてしまった弟。

立場を失った自分には、矢面に立つ権利はなくなってしまった。それでも、出来る事等いくらでもある。次期当主として言動を抑えながらも行動を使用する久臣を、自分なりに手助け出来る事。こうやって一族と久臣達の橋渡しになる事くらいは、姉として行っても罰は当たらない。

そう思えば言葉は自然と口に出来た。
その穏やかな、けれどどこか誇らしげな彼女の笑みに、老人は負けたと言わんばかりに肩を竦めて苦笑して見せるしかない。


「……綾乃様も随分と逞しくなられたようで」

「皆様の手厚い教育の賜物ですわ。その点は感謝します」

「これは光栄ですな」


 皮肉に皮肉で返されるが、ざわめく胸中を押し込んで綾乃は黙って表面だけの微笑みを返す。これが普段であれば、堪忍袋の緒は既に切れて久臣と同じように声を荒らげたかもしれないが、今はそれよりも大事な事があると自分の心を鎮める。

けれど ― やはり伴侶や大切な友人を貶められた物言いを言われては、こちらとて一致報わねば気持ちも治まらないので、今後そのような事を安易に口にするなと言う警告と、本題に切り上げるキッカケとしてもう一言だけ皮肉を混ぜた。


「正直、私も自身の伴侶や大切な友人たちをああまで言われては、声を荒らげて怒りを露わにしたい気持ちです。
ですが、それをしないのはここまで言われるのを承知で皆様方に私の決意を聞いていただきたかったからこそ」

「決意…?」


 突然の申し出に、下座にいる者達がざわめいた。けれど、そのざわめきが静まるのを待たずに綾乃は上がった疑問に答える。


「ええ。一族に強い来訪者の血を入れるからには、嘉凪に害をなさないそれなりの証を示さねば納得なされないでしょう。

 我ら一族の直系は力を賭して一族を護ると言う、改めて誓い直す事。来訪者の方々には一族と互いに害を与えず、友好を結ぶ盟約を。そして一族の皆様方には来訪者を受け入れ、有事の際は直系の責任の元、保護を受ける事。互いに譲歩をするのであれば私もそれが妥当点だと思います」


 淡々と語る綾乃の声は、まるで水面に落ちる水滴の様に静かに、けれど確かにこの場に染み渡る。久臣の声がその場に居合わせる者達を誇示し、奮い立たせるような力強い声と言うならば、彼女の声は凛と冴え渡り、皆に平穏を与えるような静けさだった。

彼女が次期当主だった時は、久臣の持つ威圧感にも似た風格が彼女のものだったのだが、今はそれが完全に成りを潜めて、ただ穏やかさを保つ。綾乃の後ろで彼女の後姿を見ながら、次期当主と言う荷を降ろし、1人の女として大切な者達を守ろうと決めた嘗ての主の姿に、貴也は少しだけ安堵を覚えた。
彼女が安定すれば、次期当主の座に着いた久臣も直ぐにその頭角を現し、当主に相応しい青年になるだろう。
そうすれば ―


「譲歩ですと?そもそも我らは反対などは…」


 貴也の思考を遮り、先程綾乃に皮肉を発した老人 ― 河瀬の氏族長、彩華の祖父だった。

先程の彼女のへの皮肉は、一族の者達の言葉を代弁した言葉。きっと、綾乃を指示する辰瀬の者達も同じ事を思っていたのだろうが、久臣を支持する河瀬の者の方が言葉を口にしても角が立ち難いだろうと皆への配慮があったのだろう。
今回の言葉も先程の言葉同様に、本殿の空気を代弁するように発せられていた。

勿論それは綾乃も久臣も、上座に位置する直系に関わる皆が理解している。
旧家であるからこそ各々立ち位置と言うものが大事で、状況によって発言するに適する者が存在することも。

だからこそ、老人の言葉にも綾乃は穏やかさをそのままに言葉を返す。


「口にはしていませんが、見えぬものを不安を感じるのは当然でしょう。ならば、かつての我らの祖とこの地に住む者達が行ったように明確化すればいい。」


 言葉を綾乃の先を引き継ぐ様に、今度は久臣が口を開く。
ここは予め姉弟で打ち合わせ済みの事だった。発端は綾乃が原因であるが、今から彼が口にしようとしている事は、一族に関わる言葉。ならばその座を降りた綾乃よりも、次期当主である久臣が口にするのが妥当だと判断したからだ。


「そこで姉弟にて当主にも相談した結果…功刀殿には姉上との婚約にて盟約とし、嘉凪の一族に対する来訪者の理解の礎となっていただく。
そして我らの友人達には、来訪者とその交流がある者としてその盟約の証人として行動で示して頂こうと言う形になった。」

「形に?それは如何なる…」


 河瀬の氏族長の言葉を遮り、辰瀬の氏族長が久臣達の意図が分からず訝しげな顔をするのを、久臣の赤銅の瞳に映される。
それを確認し、久臣はゆっくりと次の言葉を口にするために唇を開いた。





                        今回はここまで。見難いかと思って、ちょっと行間増やしました。
                        …次で終わんのかよ、これ(汗
                        前の話から一ヶ月開いてしまったので、次は早めにアプしたい。
                        したいけど、…諸事情で今月末まで忙しいやも。




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