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管理の合間に背後がのらりくらりしてる所です。
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2025/03/15 (Sat)
※澄律(ちょうりつ と読む)

◆一応、恒例の注意書き。

1.これは<前略>→「澄律1」の続きの話です。
※分類:『竜神衛士の一族、嘉凪家の話』がそれに該当。

2.この話に出てくる「嘉凪の一族」はあくまで嘉凪の脳内で作ったフィクション一族です。
  歴史とか民俗学、日本文学に詳しい人に言わせりゃ荒も多すぎて見れたもんじゃないと思います。
  なので、くれぐれもこの設定を参考にしないでくださいな。恥ずかしくて死ねます。



※前回の最後の部分

「今のご時勢で相手の家柄は関係なかろうて。嘉凪の家に入ってくれる、入り婿ならば申し分ないじゃろう。ましてや限りない白と言っておる。もう調査の必要もなかろう?」

「別に家柄とは言うておらん。だが、血族の敷居を超えておるのじゃぞ。調べるに越した事はなかろう」


 苛立たしげに交わされる言葉に、綾乃は愚か、久臣もげんなりとしていた。
事の内容が本題に入ってから、直系の者は誰一人として口を開いていない事に皆は気がついていないのだろうか。それほどに、彼らが討議している事が無意味だと言外に滲ませているというのに。




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「― いつから…ここは我が地になったのだろうな」

「久臣様?」

 いい加減痺れを切らせたのは、渦中の人物の伴侶である綾乃でも、一族をまとめる当主の茂久でもなく、一番冷静だと思われていた久臣だった。

正しく伸ばした姿勢はそのままに、けれどすっかり大人びてしまった表情には呆れとも諦めとも取れる表情を浮かべている。彼にしては珍しいその表情に、無駄な討論をしていた一族の者達も黙って彼の声に耳を傾けた。

「皆はお忘れになられておいでのようですが、我らとて、祖はこの地に来る以前はいずこが出自か分からぬ者。この地に根付く一族にしてみれば『来訪者』に過ぎない。

けれど、この地の者達は我らを竜神を祀る一族として受け入れてくれた。
だと言うのに祖が受けた恩義を忘れ、嘗ての我らと同じ来訪者を化外と恐れ、門を閉じる。
……祖が聞けば何と嘆くでしょうか」

 淡々と言葉を紡ぐ久臣の声色は普段よりも静かだった。

まるで水面に雫を落としたかのような静かな声には、彼の感情は読み取れない。少年にしては早熟過ぎる久臣の言葉に異を唱えたのは、意外にも辰瀬の末席に名を連ねる初老の男。

「ですが、あの時代と今世は違うではありませぬか。我らが祖は久臣様達同様の元は人間。しかし来訪者と呼ばれる者はそうではありません」

「人ではないと、門を閉ざすと?」

「当たり前ではありませぬか。我らは直系と違い、化外どころか同じ人間からも身を守れぬ力無き者。それがどうして人外と言われる者達と共存できましょうぞ。」

 静か過ぎる久臣の言葉に対し、男の言葉には少々熱が篭っている。
能力者を超越した力を持つ者、当主達の様に竜神に選ばれた特別な存在だと思わなければ受け入れられない彼らにとって、能力者は理解の範疇を超えていた。

同じが流れ、たった少しだけ、彼らとは違う事が出来るだけだと言うのに。
強き者が弱き者を守るのが、竜神の衛士の一族はそれを当然としてこの時代まで血を繋げてきた。

「……その言葉が、力でないとなぜ言える」

「なっ…!?」

「そうやって他を傷付ける言葉が呪詛だとなぜ気がつかない!」

 久臣の怒号に、皆が息を飲んだ。

「貴殿が心無く放った呪詛が、彼らを傷付けているとなぜ分からない!
 刃物で与える痛みが傷で、言葉が与える痛みがなぜ傷ではないと言える。それでもなお力無き者と口にするのか!
我らは言葉を力とする一族でもある。その一族の一端が言葉が力ではないと戯言を口にするのか!」

「それは…」

「当主も、姉上も、貴殿等の不安が分かるから何も言わないが、なぜ同じ不安を来訪者が抱かないと考えない!見知らぬ地に来て不安を抱えている者だとなぜわからない!」

 喉が渇く。だと言うのに腹から出した声は喉を震わせているのに、その感覚がまったくしない。こんなにも声を張り、感情を言葉にしたのはどのくらい久し振りだろうかと、どこか冷静な自分が頭の隅で考える。

それ程に自分は ―

「何もいきなり見ず知らずの来訪者を受け入れろとは言ってない。全くの未知を受け入れるのは、誰にだってかなりの勇気がいる。

けれど…なんで俺達が出会って、交友を深めた者達まで本人に会わずに否定するんだ。何故彼らの血族ばかりを気にして、彼らの本質を見ない!
…そんなに俺達や彼らが信用ならないのか」

 哀しいのだ。
自分を取り巻く能力者が、来訪者が、どれだけ優しく、暖かい人たちばかりだから。

会う事も、見る事もせず、ただ風評だけで恐れ、拒む。

噂が恐ろしいものであればあるほど、それも仕方がないかもしれない。けれど、そんな彼らが本当はどんな人柄で、どんな事に涙して、どんな事に怒りを覚えるか。それを知っている自分達がいて、それを伝える事が出来るのに、……彼らは自分達のその言葉すら聞こうとしない。

久臣の言葉に静まり返った部屋に、先程の男が言葉を発して静寂を打ち破った。



                      とりあえず今回もここまで。
                      別に嘉凪は一族の人達が悪いとか、久臣たちが偉いとか言うつもりは
                      実はあんまりなかったりします。
                      と言うのも、未知なるものが怖いのってどうしても怖いですからねー。
                      ただまあ、聞く耳もたんのはいかんとは思いますがねぇ。
                      
                      そしてあと2話は続くかなーと。
                      区切りどころが難しくて困りまする。

 

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