通り雨にあった。
近くにあったコンビニの軒先を借りて、久臣は雨が通り過ぎるのをぼんやりと音楽を聞きながら待っていた。
視界に映るのは、斑模様に地面を濡らしていく地面。
それをただ何となしに見つめるだけ。
そういえば
自分の生家の祭神である竜神は河の神だが、雨は河を作る為、竜神の血なのだと誰かが言っていた。
いや、ここ二ヶ月ほどで読み漁った当主の手記の中にあったのかもしれない。
……まあ、どちらでもいいのだが、単に雨が血と表現するのはいかがなものだと思っただけだ。
本降りではないので、濡れて帰っても良かったのだが、濡れて帰れば何人かに怒られるのは目に見えているので雨宿りをするに到ったのであって、別にその下りを思い出したからではない。
竜神の血
唇だけでそう口にして、透明な血ならば濡れて帰るのも悪くはないかと考えを改める。
血に濡れるだけ強くなれるとは思わない。
だが、これが竜神の血だと言うのであれば、彼の者の衛士である自分はそれを甘んじるべきなのだろうかなどと、妙な考えが過ぎる。
ただそれだけ
そう思った頃には、久臣はまだ降り続く雨の中、濡れるのを厭わずに帰路へと戻った。
雨が 降る 大地を潤す 恵の雨が
濡れて帰ろうと思ったのは、単なる気分なのだろうが
何となく
この雨に濡れれば
自分の中にある迷いは消せるのではないかと思っただけだ。
アンオフィなのでそんなに深い意味はないSS。
ただ、久臣が迷ってる事があるって事ですが、
それも彼にとっては重要ですが、特に体制に影響ないっす。
まあ、次回更新予定の小説の伏線って事で。PR