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管理の合間に背後がのらりくらりしてる所です。
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2018/07/20 (Fri)
WDプレゼントSSとは別ですが、ちょっと別話(アンオフィ色強いっす)を。
でも若干久臣の仲のよい人の名前が出ます。

このSSを思いついたのは、きっと週末近くで嘉凪が疲れていたからに違いないかと。






「却下だ」

ぴしゃりと、まるで鹿威しがその縁を石に打ち付ける澄んだ音の様に、
久臣は短く告げた。

深縹の小袖に藍鉄の袴を纏った久臣が居間の上座に座り、その左側に静かに彩華が座る。
たかが中学生二人が座っていると言うのに、彼らの目の前に座っている二人の青年
 ― 嘉凪の一族の末流で突然久臣を来訪してきた者だ ― は、軽い威圧感に息苦しささえ感じていた。

話の内容はこうだった。

とある信仰宗教の集まりの演説で、当主である久臣の祖父、茂久に出向いてもらえないかと言う話だった。
だが、当の茂久は近くの宮司の寄り合いに出ており不在。
その為、次期当主であり嘉凪一族の事実上次席の久臣にお伺いを立てに来た、と言う事らしい。

しかも悪い事に、彼らは当の本人の予定を聞かず、その話を受けてきてしまっているのだ。
お蔭で久臣は顔には出さないが、先ほどから不快感すら感じており、
それを表に出さない様にするだけで精一杯だった。

けれど、そんな彼の努力もいざ知らず、拒否の言葉に来客二人は悲痛な悲鳴を上げた。

「そ、そんな! 先方には既に約束を ―」
「それは其方の都合でしょう。当主に伺いを立てる事無く、約束を交わした貴方達の落ち度に過ぎない。
 心配せずとも明日、先方には俺と当主の影で謝罪に行く。貴方達は着いて来なくても構わない」
「……」
「それから、しばらく二人には当主への目通りを禁ずる。」
「なっ!? 何故ですか!」

久臣の静かな宣告に、来客の二人は腰を浮かせた。
そんな彼らを逆に微かに眉間に皺を寄せ、久臣が淡々と語る。

「嘉凪の教えは信仰宗教ではない。信仰はその者の心次第。
 それを ― 神和の恩恵を宣伝広告にしようなどと、営利目的での当主への申告とは如何なる所存だ。」
「わ、私達はただ、お家の事を考えて ―」
「貴方達の一族への想いは称えよう。ただし、方法が悪い。
 相手が当主であれば、謹慎は避けられぬ程の提案だ。これで済んで幸いだと思って頂きたい。

 ― 彩華、客人のお帰りだ」
「はい。 お二人とも、通達の解除は私から連絡いたします」

静かに目を伏せて、久臣が傍らに控えていた彩華に告げると、
音もなく立ち上がった彩華が居間から玄関への扉を開いて来客者達を見送る。

二人の訪問者が去り、居間に取り残されたのは久臣と彩華のみ。

「……まったく、俺が次期当主になったからって、みんな読みが甘すぎだろ」

はーっと長い溜息を吐き、久臣がすっかり冷えてしまったお茶を飲み干す。
そう、先ほど来ていた二人は久臣を説き伏せ、当主である茂久に進言してもらおうと言う魂胆での訪問だった。

家を一族として、権威者として大きくしたい気持ちは分からなくもない。
けれど、別に嘉凪の家は仏道ではないので、門下が居る訳でもない。
在るのは、一族の血の繋がりと、地元にひっそりと息づく自分達を、
そして竜神の化身だと言われている川を護ってくれる地元の者達の優しさが嘉凪の一族を支えてくれている。

竜神はそれ以上を望んでなどいない。
だから、嘉凪の一族はただ穏やかな時の流れの中、川がただ在るように在るだけだと言うのに。


久臣が次期当主に着任して、まだ三ヶ月程度。

中学、4月で二年生となる若輩の次期当主と言う事もあり、早めに懐柔しておいて、
自分達の有利に働いてもらおうと言う魂胆の者が後を絶たないのだ。
と言うか、一族の数自体は少ないので、そう言う魂胆の者が諦め悪くも繰り返し足を運ぶのだ。

お蔭で最近、久臣の休日の半日は彼らの訪問で潰れてしまう。
疲れきった反応の久臣を見て、彩華は困ったように苦笑した。

「久臣様、気分転換に久臣様のお友達もお誘いしてGTに行ってきてはいかがですか?
 午後には茂久様もお戻りになられますし。」
「えると とかか?」
「はい。あの方達であれば、久臣様も気分転換になりますし、このままでは相手の思う壺です。」

集中力の高い久臣の事だ。早々懐柔などされないだろうが、
それでも人間疲れてしまっては流されて思ってもいない事を口にしかねない。

「…そうだな。少し暴れてくるか」

立ち上がって背伸びをすれば、少しばかりいい音が背中から聞こえてきた。

「よし。それじゃ行こう、彩華」
「…え?」

急な提案に彩華がきょとんとする。その表情を見下ろして、久臣がふと笑った。

「え?って。 彩華も行くんだ。俺の代わりに留守番、とか考えてるのはお見通しだからな」
「……致し方ありません。ですが、足手まといですよ?」
「足手まといだと思うんなら、尚更一緒に来て俺達の技盗めばいいだろ? さて、どこ行くかな」

立ち上がった久臣の表情は、嘉凪一族の威厳のある空気を一掃し、
年相応よりも若干大人びた、いつもの彼の雰囲気を纏わせる。

その主を見上げ、彩華は微かに微笑んだ。

「ではお供させていただきます。折角でしたら、先日の新しいGTに行きたいですね」
「そうだな。比較的近いし、身入りもいいか。 OK、それで決定だな」
「綾乃様にご連絡は?」
「あー…メール入れとく。どうせ伊知にいの家だろ、電話で邪魔して馬に蹴られたくない。」

他愛のない話をしながら、二人は居間を離れる。
その蟠りかけていた部屋に、彼らが開け放った扉から入った風が静かに吹き抜けた。



                       最近の久臣が低速だった理由。
                       まあ、背後が忙しかったと言うのが本当ですが、
                       敢えてアンオフィをこじつけたらこんな感じになりました。

                       ちなみにこれだけ見てると久臣と彩華がいい感じかもしれませんが、
                       実は二人とも恋愛感情はありません。
                       まあ、久臣にとって、実は彩華は嘗ての想い人でしたけどね。
                      (※現在は久臣にとって彩華は、信頼と背中を預けられる大切な相棒です。
                        その辺は「雪柳」の続きで詳しく語られるはず。)
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