太鼓の音が響く中、静かに白い仮衣を纏った蒼い竜が現れる。
その背に流れる赤銅の髪から、彼女が嘉凪綾乃その人だと測ることが出来た。けれど彼女を見ても、普段の親しみやすい雰囲気は一切伺えない。ただ水面の様に静かさだけが彼女を包んでいる。
激しい太鼓の律動の中、まるで空間を切り取ったかのような静かさが舞台の中央へ進み出る。
右手に握るのは鋭く光る青銀の刀身の日本刀、そして左手には鮮やかに、けれど鈍く光る深紅の地獄の業火の様に燃える赤い扇。対称な色合いだと言うのに、なぜかその色合いが落ち着いて見えた。
それもその筈。よくよく見れば、舞手の目の色も不思議と扇と非常によく似た色を帯びている。
舞手であるはずの綾乃の目の色は赤銅を溶かしたかのような色合いだというのに。
舞台に上るとその白い面から深紅の瞳が周囲を見下ろし、一瞬その色を細めて微笑んだ気がした。
御柱のその微笑みの様な雰囲気を合図に、足音を表していたかのように力強い太鼓の音楽が、2人の笛奏者の音色を合わせて急激に音楽となる。
勢いと豪快さ、そしてその中にどこか親しげのある太鼓の音楽に合わせ、笛の音が高らかに澄んだ音を響かせて音楽に上品さと華やかさを印象付け、その中央で竜を纏った器がまるで音楽の中を泳ぐように優雅に剣と扇を振るい舞を舞う。
白い仮衣が、蒼い戦羽織がまるで竜の体の様に円を描いて回る。
手にした深紅の扇が風を呼び、木々が囁き穢れを集める。
そして青銀の日本刀が集まった穢れを流れるように斬り祓い、恵みの雨を呼ぶ。
音楽は力強くも高らかだと言うのに、少しも聞く者に耳障りな感覚はなく、むしろ心臓の鼓動に共鳴するかのような太鼓の音、意識を集めさせるような笛の音は耳に、心に心地よく、感情を高ぶらせるのには十分。
視覚以外の感覚を奪う様な音楽に加え、最後の視覚を奪う様な流れる様で、けれど音楽同様に視覚だけではなく肌に訴えかける様な律動を与える舞は見る者を高ぶらせる。
天に掲げた扇を流れるように撫で下ろし、扇が呼び寄せた風に合わせて刀が空を切る。
舞手が円を描いて回り、動くたびに青の戦羽織りがまるで竜の長い体の様に回り、そして腕につけられた銀製の腕輪が鈴の様に音を鳴らして空気を清める。
蒼と白の装束の中、結い上げられた赤銅の長い髪がまるで炎のようだ。
気が付けば周囲の者達は魅入る者、太鼓に合わせて手拍子を始める者のどちらかに分かれていた。
それ程に神楽は勢いがあり、静かに魅入って楽しむ従来の者と違い、一緒になって楽しむものだった。
舞を見慣れた地元の者達から、威勢のいい掛け声が舞台へ響く。
すると面を付けているはずの舞手が、奏者が楽しげに笑った気がした。それと同時に奏者の一人
― 久臣が太鼓を持ち上げて調子を取りながら、舞台の前へと進み出て他の4人とは違う更に力強い律動を刻み始めた。
7人で一つの音楽を奏でていた鼓動の中に、主旋律が現れ始める。
それに更に周囲の手拍子が勢いづき、舞手の踊りも変わった。
笛の音が止み、太鼓の二重奏に合わせる様に、舞手が力強く足を踏み鳴らす。まるで雨で潤った地面を踏み固めるように。
沸き立つ歓声、そんな中鼓奏者の掛け声が力強く響く。
優雅だった舞は急激に力強い踊りに変わる。
気が着けば彼女の後ろで笛を奏でていた緋袴の少女 ― 彩華がその真剣を受け取って後ろに下がっていたのだ。扇を使用しての流れるような、けれど荒々しい太鼓の音楽に合わせた力強い鼓動の様な踊り。
赤銅の髪を風に躍らせて踊る舞手の踊りはまさに川の流れの様に穏やかで、けれど鼓動を打つように踏みしめて舞う姿は、太鼓と観客たちの中を泳ぐ竜のようで。
観客の手拍子すらも音楽とする、まさにそんな光景だった。
歓声の中を泳ぐ竜は、まさに嘉月川の流域に住む者達を守護する竜神そのもの。
竜が愛し、竜を愛した者達が一緒になって踊り騒ぐ。
目の前に広がる境内の舞とその周囲で魅入る者達の様子は、その様子を見事に再現したものにも見えた。
舞の振り付け教えてとか言われても、知らんがな、の一言で終るです。
そんな適当な人が書いた、適当な文章ですんません。(土下座)
さてはて、次はやっとこさお客さん達が出てくるはずです。
が、そこはまだ書きかけなんで3連休までにはどうにかしたいぞ。
そしていい忘れてたけど、お客さんはもう締め切りますた。