カリカリ カツカツと紙の上をペンが滑る音がする。
けれど、ふとした時にその動きも完全に止まってしまった。
「……」
何も言わずに彩華はノートの上にシャープペンシルを置き、勉強机から立ち上がると、窓へと歩み寄り、その窓を静かに開けた。
時刻は既に22時を過ぎているので、闇の帳は降り、住宅地の中なので、近隣の家の明かりが夜闇を照らすのみ。
明るくはない空を見上げてみるが、街灯が邪魔をして空の星は見えない。
この辺りで星を綺麗に見ようと思うのであれば、それこそ住宅街を抜けるしかないのだ。
“次期当主の影”として拝命されてから一週間経つが、今日神和神社を訪問した際、主である久臣は不在だった。
単に顔出しに行っただけなので、特に用事があった訳ではない。
なので代わりに彼の姉の綾乃に勧められ、ケーキを頂いて軽い雑談をして帰ってきた。
だが、後で綾乃から話を聞いた久臣からメールを貰ったのだが、どうやら結社に行ってそのまま友人達とGTに行っていたらしい。
折角来てくれたのに、不在で申し訳なかったとの折の文章を見て、律儀な彼の反応に彩華は苦笑してしまった。
強くなる為に修行の一環で彼の地を訪れたのだろうだから、謝られる理由は無い。
けれど、思う。
自分は弱い。
前線で戦うタイプではない綾乃にですら、自分はまだ一度も鍛錬で一本を取った事すらないのだ。
ましてや彼女を打ち負かし、次期当主の座を譲り受けた久臣には到底敵わないだろう。
だからきっと声もかけてもらえなかったのかもしれないし、そこまで深い意味はなかったのかもしれない。
でも ―
ふと彩華は机に戻って置きっぱなしの携帯電話のメール画面を開く。
『今週末、ご予定はありますか? GTに同行していただければと思いますので、都合が宜しければ空けおいていただけますでしょうか。』
それだけを打ち込んだ用件だけのメールを、久臣と綾乃に送る。
四人目は ― まあ、二人の返事を聞いてから捜してもいいだろう。
そう思って携帯を机の上に置き、再び窓際へ戻る。
少しでも早く 強く。
背中を護らせて欲しいとまで焦るつもりはないが、せめて
「共に戦えるくらいには」
夜闇に呟いた言葉は、自分への誓いだ。
だから誰に聞かせる訳でもないから、そのまま言葉は寒い夜空に溶けてしまった。
けれど、その言葉に呼応するかのように、携帯電話が机の上で軽い音をたてて震えた ―
今回もあんまり深い意味はないですがね。
ただ、最近嘉凪自身が微妙に忙しいので、彩華をGTに連れて行ってあげられない罠。 川orz
彩華もだけど久臣もうちょっと待ってくれい…。
そして彩華も交友関係広げてあげたいから結社入れてあげたいけど…うん、今月無理。