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管理の合間に背後がのらりくらりしてる所です。
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2018/10/19 (Fri)
ちょっとしたSS…って長さでもなくなってきたかもしれない。(汗)


今回は久臣とその祖父の茂久の話です。
ちょいとだけ渡会さんトコの綾乃お嬢さんの名前と設定が出てきますが、そちらには了承済みです。
えーっと、でも解釈違いがあった場合は修正しますんでお手数ですが手紙お願いします。(汗)


◆◆◆◆◆◆◆◆





自室で用事をすましていた茂久が居間にやって来ると、そこには珍しく久臣と彩華の姿しか見受けられなかった。


「茂久様、どうされました?」

「綾乃はどこに出掛けたのじゃ?」


 いつも外出していなければ、必ずと言っていい程に居間に居て、なにかしらの家事をしている綾乃の姿が見えず、茂久は首を捻った。

まあ、彼女も孫娘である以前に、家族公認の恋人もいれば人付き合いのよい一人の女の子だ。
必ず家に居なければならない道理はないのだが、常日頃から居る姿が見えないと不思議に思うのも仕方ない事だろう。


「ああ。友達の家……いや、家と言うより森だな」


 彩華と今年の暦を見て行事の確認をしていた久臣が、クルリと手にしていたペンを回す。
その暦に6月のある日にちに丸がつけられているのを横目で見て、直ぐに目を反らす。印が付けられた日は ― 茂久の息子夫婦、つまり綾乃と久臣の両親の命日だ。


「森じゃと? 臣、その友人の名はまさか、『渡会』ではないか?」


 暦の印には茂久は触れなかった。
触れたところで、久臣も特に何を言う訳でもないのだろう。
四年の歳月は悲しみを薄れさせるには十分な年月なのだが、だからと言って傷口が完全に塞がる訳ではない。
だからその傷を抉るような事はするべきではないと判断したのだ。
いくら久臣が年齢に見合わない落ち着きを持っていたとしても、少年は少年だから。

そんな茂久の気遣いに気が着いて気が着かない振りをして、久臣はそのまま会話を続ける。
彼自身触れたい話題でないのもあるのだが、それ以上に祖父の口から出た名前の方が気になったのだ。


「そうだけど……そう言えば、あっちも確か名のある旧家だったよな。爺ちゃん知ってるのか?」

「互いに鎌倉を拠とする旧家じゃて。密なる関係でこそないが、知らぬ訳ではない」

「そっか。言われてみれば、そうだよな……でも、綾乃さんも俺や綾ねえもお互いの事は知らなかったぜ?」


 久臣の実姉である嘉凪綾乃と、名前が出た渡会綾乃の出会いは、高校一年のクラスがたまたま一緒になったと言う偶然の産物に過ぎない。
そしてクラスメイトをきっかけに互いに交流をし始めたのであって、互いに互いの生家の存在を知っていたからの交流ではないと
久臣も聞いているからこその疑問だった。。


「旧家は閉鎖的であり、封ずる事で一族の掟や密を守る。永く在れば、外部に見られたくない秘め事は自然と生じる。
互いに馴れ合う事を悪しとせず、良しとするのは我が一族くらいじゃろうて。」

「はぁ…そんなもんか」

「そんなものじゃよ。昨今はそこまでではないが、それでも付き合いが密でなければ、一族同士の交流までは珍しかろう」


 確かに旧家でなくとも、最近のお家事情とはそんなものだ。
嘉凪の家が昔から此処にあるから、久臣も近くの商店街を始め、住宅街に昔から住む人達と仲がいいが、
最近引っ越してきた家の住人は家族構成は愚か、名前も知らない人も少なくはない。
互いに交流がなければ、情報も入らない。それは家事情云々を差し引いたとしても、納得のいく答えだった。


「まあ、そんなもんだよな。でも、爺ちゃんが知ってたのは意外だったよな。
綾乃さんなら、彩華も世話になってるし」


久臣の言葉に茂久の視線が彩華へと移る。
その一族の長たる者の視線を受け、彩華は静かに頭を下げた。


「僭越ながら、結社にお邪魔させていただいております」

「ほう、渡会が他者を内に入れるとは。そのお嬢さんは今までの渡会とは違うのじゃな」

「そうなのか?」

「言うたであろう?外と隔たるのが旧家じゃ。
 意味なく他家を安易に内に招き入れる事は普通はせんじゃろう。そのお嬢さんが当主になる頃には家も変わっておるかもな」

「…変わる事が、いい事なのか?」


 久臣の言葉に、これからの渡会の家の変化を想像していた茂久は苦笑を返す。
彼の言葉に滲んでいるものに気が着いたのだ。


「無理に変えずともよかろう。変わらぬのが悪い当主と言う訳ではない」

「けど、一族の在り方を一番変えた爺ちゃんは嘉凪最高の当主だって言われてるぜ?」


そう、茂久は嘉凪の一族の最高の当主と言われている人物。
彼の行った様々な行動は一族に良い影響を与えたと一族中から彼を賞賛する声は多い。その祖父を自分の前の代としていかねばならない久臣にしてみれば、高すぎる壁と言っても過言ではないだろう。


「そんなもの、儂の行動の結果を見た他者の評価に過ぎん。課程では大分叩かれたがのぅ」


 かっかっと快活に笑う茂久は口を引き結んで黙り込んでしまった久臣の頭に、その皺が多くなった手を置いた。


「確かに儂の行動は認められ最高と言う評価を得ているが、それは今だけの話じゃ。
お主が行く行くは当主となり、成した事が評価されればその名は後世にはお主のものかもしれんじゃろう?」

「それは分かってるけどさ…。」


 茂久の言葉の正当さは久臣もきちんと理解している。その為に、この祖父がどれだけの努力をして当主の座に着いていたのかも、本人の口から聞いた訳ではないのだが、彼をずっと支えてきた彼の影に話を次期当主になると決まったその日に全てを聞いた。

この祖父が そして嘉凪の当主がどれだけの信念を持ち、一族を守り、導いてきたのかを

だからこそ、歳若い久臣には彼の功績と言う過去から現在に到るまでの道は想像できても、今から自分が行わなければならない事と歩むべき先が見えなくて不安になる。
いくら久臣が年齢に比べてしっかりした性格だとは言え、まだ13歳そこらの茂久の6分の1程度しか生きていない少年には想像の域を越えているのだから。

そんな孫の不安を、年老いた茂久も分かったのだろう。
ふと表情を楽しそうに歪めて久臣を見下ろしてニヤリと笑った。


「なんじゃ。自信がないのか?」

「…馬鹿言わないでくれ。自信がなくても、なってみせる」


 ムっとした様に顔を顰める。こうやってムキになるのが逆に子供っぽいのだと言われてしまうのだが、それでもムキにならずにはいられなかった。

出来ないと諦めていては、出来る事も出来ない。
かつての自分も、能力者としての能力開花の希望を捨てなかったからこそ、今の自分になれた。
能力者として覚醒し、次期当主の座を得て、姉も当主の座から解放出来た。

ならば、次は祖父の番だ。

決意を秘めた久臣の赤銅の瞳が、微かに咎めるように茂久を見つめる。その強い意志が茂久にも十分に伝わり、心強い跡継ぎの表情に現当主は微かに意地悪気に歪めた笑みを微かに綻ばせた。


「そうかそうか。まあ、祓いの才はお前の方が秀でておるからの。」

「本当か!?」

「寄せは綾乃が上じゃがの」


 嘉凪の一族には邪を祓う浄化を行う祓いの能力、呪いを紡いで陣を成す寄せの能力がある。
(※前者が嘉凪の一族の祖となった人物の青龍拳士の能力、後者が呪言士の能力と言われているが。)
そして一族最高の当主と言われている茂久は両方を兼ね備えているのだ。

久臣はその寄せに該当する陣の能力が実は苦手なのだ。
お蔭で月一である竜神への奉納舞で祓いに当たる楽器の演奏は任せてもらえるのだが、まだ舞自体は任せてもらえる事が出来ず、綾乃が代わりに行う事になっている為、茂久の言葉にガックリ肩を落とす。

まあ、今のまま鍛練を続けて根本の能力が底上げされれば、いずれ舞も任せてもらえるようになるのは分かっているのだが。


「…しっかり釘刺すあたり、爺ちゃんだよな…」
 

 スパルタではないのだが、手綱は緩ませ過ぎないのが茂久の教育方針だ。
お蔭で綾乃も久臣も年齢の割りにしっかりとした性格に育ったので、結果はいいのかもしれないが。


「当たり前じゃろうて。……儂もいつまでも当主で居られるわけではない。臣には儂がおらずともしっかりとした当主になってもらわねばならんのじゃからな」

「爺ちゃん……」


 長く続く嘉凪の家だが、茂久ほど長く当主の座に着いた当主はほぼいない。
居たとしても、その多くは見えざる狂気に犯され、正気を失い、次の当主にその座から引き落とされた者達ばかりだ。
ある者は幽閉され、ある者は大病を患い病床から出られぬ事となり、ある者は  その命を散らす事となった。

銀誓館のイグニッションカードの恩恵を持たない茂久も、いつ狂うかは分からない。
けれど今まで狂わずに居られたのは、単に両親を失っても真っ直ぐに成長してきた二人の孫のお蔭だ。

けれど、その二人も既に自立を始めようとしている。


「引退後は、まずは伊豆に行ってくるかな。 なんじゃ臣、まさか儂が尻を持たねば当主業も出来ぬのか?」

それを分かりながらも、茂久はあくまで明るくそう口にした。そんな祖父を見上げて、久臣も苦笑する。


「んな訳ないだろ。伊豆でも熱海でもお好きに」

「うむ。好きにさせてもらおう。 さて、儂は本殿に居るので、綾乃が帰ってきたら彩華、呼びに来てくれぬか」

「畏まりました」


 彩華の快い返事を聞きながら、茂久は居間を後にする。
その後姿からは御歳76の老人とは思えないほどの気魄と威圧が伝わってくる。


「…もう、時間がない、か」


 時間が無いのは、久臣も、綾乃も、ましてや茂久本人も分かっている。
分かっているからこそ、孫二人は焦っているのだ。綾乃は当主業からは身を引いたので、料理などで茂久の体に負担をかけないように気遣い、久臣は当主業に身を入れて茂久を補佐しながらも、自分もその業務を身に付けようとしている。

嘉凪の当主の寿命は平均寿命が長くなった今であっても、長くても 60までだった。

必ずしも60歳を迎えたと同時に天寿を全うする訳ではないのだが、おおむね50程度で当主を退いた過去の当主達も、60になる前後にはその命に終止符を打っていた。

茂久は、既に気力で生き延びている。
当主を退けば、その気力が尽きるかもしれないと懸念もあるのだが、同時に見えざる狂気が彼の体を蝕むのも時間の問題。
ならば、孫二人がそれをどうにかするしかない。

幸い、茂久にはまだ気を張る為の口実はいくらでもある。それが綾乃と久臣の存在なのだから、二人が成長すればそれはいくらだって用意できるのだ。

久臣が、色んな事を考えて当主を継ごうとしていることも、茂久の命の危うさも、久臣の影である彩華は知っている。
だからこそ、ポツリと呟いた久臣の言葉に彩華は微かに表情を曇らせた。


「久臣様…」

「心配するな。俺が早く継いで、爺ちゃんに能力を使わせなければ問題ない。 ………早くしないとな」


 姉である綾乃を当主の鎖から解放出来た。
あとは  その鎖に身を絡められ、それでも自分達孫を育ててくれた茂久を解放するのみ。

暦は既に水無月

祖父の一人息子夫婦であり、久臣の両親が 天に召された月


雨が止み、夏の暑さを感じられる時  あの祖父の体を縛る鎖の鳴る音も聞こえなくなるのだろうか






                           んな訳で、ちょっとした久臣と茂久の話。
                           久臣がレベル64になったら当主引き継ごうかなーと思ってる次第です。
                           …いつになるだろ。8月までに間に合うか…?(汗)

                           

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