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管理の合間に背後がのらりくらりしてる所です。
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2018/09/21 (Fri)

◆一応、恒例の注意書き。

1.これは「蒼衛」の続きの話です。
※分類:『竜神衛士の一族、嘉凪家の話』がそれに該当。
 (蒼衛は分類が『久臣』だったんですが、変えておきます)

2.この話に出てくる「嘉凪の一族」はあくまで嘉凪の脳内で作ったフィクション一族です。
  歴史とか民俗学、日本文学に詳しい人に言わせりゃ荒も多すぎて見れたもんじゃないと思います。
  なので、くれぐれもこの設定を参考にしないでくださいな。恥ずかしくて死ねます。


※今回はちょっとザックリ文章なので会話がメインっぽいです。
 そして舞台の時期は【2011/3/21】ですのであしからず。

※そしてこれ、3話まである予定です。






「彩華、貴也」
「おや、主賓がやっとお出ましですね」


 道場から母屋に戻ってきた久臣を居間で出迎えたのは、2人の影 ― 次期当主である久臣を支える役割を持つ彩華と貴也だった。貴也の相変らずの言葉に苦笑を返しながら、居間のテーブルに置いてある箱を指差して久臣は首を傾げた。


「これ、どうしたんだ?」
「どうしたも何も、贈り物ですよ」
「贈り物…?」
「ご自分の誕生日もお忘れか、次期当主?」
「― ……………ああ!」


 十分に首を傾げて考えた後、やっと今日(3月21日)が自分の誕生日だと思い出す。そう言えば、何やら綾乃が今日はご馳走作るからと買い物に出て行ったのは先程。何のことだと思っていたが、この事だったのだ。
納得が言ったと言わんばかりの久臣に、その表情を見た彩華はやれやれと溜息を吐く。


「しっかりなさってください。」
「や、3月って春休みだったり何だったりで忙しいだろうし、覚えてる人なんててっきりいないと思ってたよ…」
「あら。それは覚えてくださっていた方々に薄情ですね」
「悪かったって…」


 だから勘弁してくれよ、と肩を落としそうな勢いの久臣を見て、彩華がお礼を忘れずにしてくだされば。とクスクスと笑う。こんな風に彩華も最近表情が豊かになってきたので、彼女を自身の影に縛り付けてしまった久臣としては少々安心出来ていた。


「で、どれから開ける?」
「んー………手近なヤツから行こうか」


 そんな話をしながら貰ったプレゼントを開けていると、先程道場で分かれたばかりの祖父が母屋に戻ってきた。どうやら辰瀬の氏族長と少し話をした後にそのままここに来たのだろう。


「臣、すまぬがちょっと時間を取れるか」
「それはもちろん大丈夫だけど…どうしたんだよ」
「少し話があってな。彩華、貴也。久臣を借りるぞ」
「はい。 それではプレゼントはお部屋に置いておきますね」
「頼む。」


 母屋から外に出て、祖父の茂久の後を追っていくと、連れてこられたのは本殿だった。
拝殿の前の境内ではお参りに来た人や、広場を駆け回る子供などがたまに遊びに来るので人の気配がするのだが、さすがに禁域と言われる本殿は相変らず人気が無い。


「それで、何の用 ―」


 草履を脱ぎ、本殿に上がった久臣は自分を待っていた人物達を認めて言葉を失った。
本殿は本来神体を安置する杜殿なので、拝殿よりも小さな作りをしている神社が多数なのだが、この神和神社は少々事が違う。本殿は一族の主要人物である20名程が入れる程の大きさであり、その上座に御簾越しに神である嘉凪の竜神の座る場所が用意されているのだ。


「………どういう事だよ。 なんで氏族長が3人とも集ってるんだ」


 本殿の上座に程近い場所、御簾の手前に当主である茂久と直系である久臣と綾乃を座る場所を空けた定位置に、3人の氏族長達が座って彼らを待っていた。
戸惑う久臣の横を、茂久が上座に程近い当主の席へと歩き出す。無言で着いて来いと言う雰囲気に、とりあえず久臣も当主の左隣の次期当主の定位置に腰を下ろす。
するとそれを認めた茂久がやっとここに来て口を開いた。


「臣、お主、自分が今日で何歳か覚えておるか?」
「それは当然だろ。14になるけど、それが?」
「…数えは」
「え?」
「数え歳は何歳になる」
「15だけど……ちょっと待ってくれ、爺ちゃん。まさか ―」
「そのまさかじゃよ。久臣」
「…はい」
「三氏族の認可も出た。久臣、お主を28代、嘉凪の当主として正式に据える事とする」


 その言葉に久臣はその赤銅の瞳を見開いた。
数え歳を聞かれた時点でまさかとは思ったのだが、本当にこの言葉が口にされるとは思っていなかった。念願の当主の座が突然自分の前に突きつけられて驚くことしか出来ない。けれど、祖父の宣言の後に誰も言葉を発さない事に気がついて、慌ててぎこちなく頭を下げる。


「あ…ありがとう、ございます」
「なんじゃ、嬉しくないのか?」
「や、その、嬉しい、けど……実感なくて。それに…なんで、今なんだ?」
「何故とは不思議な事を言うの。今日はお主の誕生日じゃろうて。
 数えで15歳は現在の20歳での成人制度が入る前では成人ではないか。そもそも嘉凪の当主は大抵15~20の間にその座を譲りうけるものじゃろ」
「それは…そうだけど…。まだ、一族の墓の浄化は終ってないし…」


 そう、今日は3月21日。久臣の誕生日なので当主として座を与えられるのは確かに自然だろう。だが、それは何も問題を抱えていない者であれば、こそだ。

久臣は1月の奉納祭の後に、一族の皆に嘉凪の代々の墓の浄化をする事を宣言した。
それは準備の為まだ成されておらず、順調に準備が終ったとしても浄化の儀が行なわれるのは10月だろう。その結果を待たずに当主の座を与えられるとは思ってもみなかったのだ。


「それはそれ、これはこれじゃ。それに座に据えると言ったが、誰が当主の座を譲ると言った?」
「…は?」
「確かに15となり、成人したお主の人柄、性格は当主として問題ないと三氏族は判断しておる。
 しかし、先日の一族の墓の浄化の件はまだ、手段が整っておらんので実行されておらん。
 責任は儂が取って引退し、氏族長に譲ると言った以上、その件が終るまで当主は儂でなければならない。じゃが、久臣『も』当主であってはならない理由はなかろう?事実、ほとんどの当主の仕事をお主はこなしておる。」
「…つまり、当主を2人置く、と?」
「まあ、そうなるな。つまり浄化の儀が終るまでお主は当主見習いと言う事になる。細かく突き詰めれば見習いと言う言葉も正しくないじゃろうが、とりあえずは仮免許の意味合いじゃよ」
「見習いですか。それなら次期当主のままでも変わらない気がしますけど」
「肩書きは大事じゃよ、この家ではな。当主として任命したが、実際に名乗るのは保留、と言う明文が必要なのでな」
「…分かりました。それではお受けいたします。継承の儀式などは浄化の後と言う事でいいですか?」
「そうじゃな。とにかく今は久臣が応じたと言う事実、それだけでよい。氏族長も異論ないな」
「「「はい」」」


 今まで黙って2人の会話を聞いていた三氏族達が、やっと声を出す。その事に久臣は訝しさを感じずにはいられない。
当主の座を据える決定権は最終的に現在の当主にあるとは言え、三氏族の口ぞえがなければそれもなされない。久臣を支持していたのは嘉凪と河瀬の二家。残りの辰瀬はまだ久臣を座に据えるには早いと渋っていたはずだが…。


「それで、臣。 当主を継ぐ者として、お主に話しておかねばいけない事がある……じゃが…」
「? 歯切れ悪いな。何なんだよ?」
「………儂も迷っておるのじゃよ。話していいものか。」


 迷うと言う言葉に、珍しく久臣は瞬きを繰返した。この竹を割ったようにあっさりとした祖父が迷う事など珍しいからだ。しかも、彼は孫である綾乃と久臣に関しては迷う事は少ない。と言うのも、彼が判断に迷う事に関しては、まず自分達の意見を聞いてくるからだ。だと言うのに、今回はその質問もなく、ただ彼は彼の中で答えを出せずに迷っている。それが珍しかったのだ。

人なのだから仕方ないとは分かっていても、やはり祖父も普通の人だったのかと改めて思った久臣は、1つ目蓋をゆっくりと閉じ、そして意を決した時にはゆっくり目蓋を開けて祖父に問うた。


「…それ、爺ちゃんが……いえ、当主が始めてお聞きしたのは何歳の頃ですか」
「……15じゃったよ。儂が当主を継いだ歳じゃ」
「なら、お話になって下さい。俺も似た様な歳です。これでも俺も当主の孫、それなりの覚悟はしているつもりです」


 今度驚かされたのは茂久の方だった。
孫である久臣が早熟した性格なのは祖父である彼も十分承知していたが、まさかここまでだったとは思っていなかったのだ。いや、綾乃もこれくらいの歳には彼と同じような対応を見せていたので、驚くほどではないのかもしれないが。


「後悔はせぬな」
「後悔など、姉上から次期当主の座を奪った時から捨てました」
「……お主や綾乃の方が儂よりも立派な当主に向いておるな」


 ふと微笑んだ当主の顔は、紛れもなく彼らの祖父の顔だった。だから、久臣もその笑顔に答えるように、孫として静かに微笑む。


「…その俺を育ててくれたのは当主ですよ」
「そうじゃったの。じゃが……今から話す事は、お主には継がれない事じゃ。それだけは忘れないでくれ。」
「分かりました」

 

 


                             とりあえず、ここまで。続きは次回



 

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